2015 チャンピオン26号

・少年ラケット
掛丸翔、新連載。'13年51号に掲載の読み切り版から、満を持しての連載化、か。
読み切りの方はテーマが分かりやすく、構成にメリハリが有って、完成度が高かった。
そのイメージが強いせいか、73Pも有るはずの第一話がお話的には若干薄く感じる。
おおむね、主要な登場キャラクターの顔見せに終わってしまった印象。

伊智朗君が卓球を思い出してゆく過程も、やけにゆっくり感じるというか。
まだ玉突きという取っ掛かりまでしか達していないのが、もどかしい。

女子二人のうち、読み切りでヨルゲンくんから伊智朗君の事を尋ねられたのが、黒髪の子です。
しかし、メインヒロインになりそうなのは宮原さんのようだ。

連載作品と読み切り作品との性質の差が、これは良い風に出たと言えるけれど、
同級の野球部員にしろ、引き取ってくれた親戚のおばさんにしろ、周囲の人間が優しい。
長期的には、伊智朗君が卓球を思い出してからの話がメインなのだから、現時点での不遇を
強調する様な演出は必要ないんだね。

読み切りとの比較に終始してしまったが、それを度外視すれば充分面白い第一話だと思う。

・実は私は
最後まで喋らせてもらえない親父さんの、ヒドい扱い。
最近の、テンドンにも変化を付けてくるやり口がとても好きです。

弱虫ペダル
小野田くんの母ちゃん、パワーアップしとるで。
そんな小野田母との、レース中の一瞬の出会いをバッチリ覚えている真波。年上好きか?
この帽子のエピソードは、伏線として後で回収されるのだろうか。

・兄妹
二巻の表紙もまた、随分とお耽美だなあ。

毎度ながら、ハイリスクハイリターンにグイグイ挑戦していく蛍ちゃん。展開が早い。
今回はシリーズ一話目から早速、妖怪成分が登場している。
前シリーズでは妖怪成分無い方が面白いとすら思ったが、今回の長い手は物語の舞台と
関連して謎めいた雰囲気が有り、良い。
これからの時代、前回の五島OBのように、悪意が形を持っただけの存在は、
今更オチ要員にしかなれない。

とうとうハイリスクをを踏み抜いてしまった蛍。
同時に、兄の死の真相に迫っている証左とも言えるだろうか。

・鮫島最後の十五日
対宝玉光戦、いいエピローグだった。
田ノ中部屋再生のプロローグだった。
負けてなお、凝り固まった自尊心の殻を破れず、クソヤロウを貫く宝玉光。
今更、これまでの自分を否定するには、衝撃が足りなかった。やり場の無い感情を、
負けの責任を、親方に転嫁する以外にその場のしのぎ方がわからなかった。
心を入れ替えようとも、引退して技も体も衰えた親方には宝玉光を抑えられない。
ここに、若くて力が有り、心を奮起させた寺井というピースが、ピタリとハマる。
後輩で、番付も実力も下で、歯向かう事なく付き従ってきた弟弟子、という
どこまでも格下な存在から叩きこまれた拳は、さぞ効いたことだろう。
光差す空流部屋の土俵を臨み、”部屋”の絆を示してシリーズ終了。

しかし、この明るい読後感は全体のクライマックスを過ぎても得られるのか、心配。
やがて訪れる(はずの)鯉太郎の破滅を想うと、どうにも安心できない。

・クローバー
イージスさんの旅立ちに一話丸々使うとか、高待遇すぎる。そして面白い。
14〜15Pの見開きはお約束のような反則技の様な、とにかくヒドい破壊力だ。